3−11−7.2指把握の力学シミュレーションの使用マニュアル
2020-9-15
実行ファイル:FingerGraspStaticsexe
把握力学計算式:FingerGraspStatics
ソースファイル :2-FingerStaticsSource
・計算式は,「詳説ロボットの運動学 第9.6節 指の腹による把握の力学」参照.
・多指ハンドのよる把握の力学問題は,指が持つ把握力の限界や指面とワーク間の摩擦力・摩擦モーメントの限界を考慮して安定に把握できるかどうかを知ることである.
・多指ハンドによる多点接触の把握は大抵の場合陸学的に安定である.ここでは1リンク×2指によって2点接触で把握した場合,どのような把握状態で安定となるかを知ることを目標とする.
・ワークを2指で上から掴んでも落ちない場合もあることが分かるであろう.
[シミュレーションの条件設定]
・ハンド
図に示すように,ハンドは1リンク1関節×2指からなり,対向して掌
正側で把握するとする.
座標系は掌面がY軸方向を向いており,ハンドの初期状態で掌面がXZ
面内にあり,原点に掌中央点がある.
ハンドの姿勢は図のX,Y軸回りに回転して変えることができる.
・ワーク:球体のみを対象とする.
球の半径と位置を変えることができる.
・すなわち,ハンドとワークの位置関係を変えて,安定把握が可能かどう
かをシミュレーションして調べる.
[操作順序]
条件設定→把握計算→力学計算の順で行う.
(1)条件設定:keyにより選択.ハンド姿勢設定,ワークの位置設定の2項目がある.
‘H’:ハンドの姿勢変更
‘P, ‘p’
: ハンドをハンド座標系のX軸回りの正逆回転
‘Q’, ‘q’:ハンドをハンド座標系のY軸回りに正逆回転
‘u’, ‘d’:ハンドを上向き・下向きにする
‘W’:ワーク(球)の位置変更
‘X’, ‘x’; ‘Y’, ‘y’: ‘Z’, ‘z’:X, Y, Z方向に移動
‘I’ :画面全体を移動・回転
‘X, ‘x’, ‘Y’, ‘y’, ‘Z’, ‘z’:X, Y, Z方向へ移動
‘P, ‘p, ‘Q’, ‘q’, ‘R’, ‘r’:X, Y, Z軸回りに回転
・条件によって把握不能な場合がある.このときは不能の表示が出て
次の把握計算に進めない.
(2)把握計算:key = ‘A’
‘s’:1回目で第1指の接触計算,2回目の’s’で第2指の接触計算
・2指とも接触が存在する場合のみ次の力学計算進む.
(3)力学計算:key = ‘S’
‘s’:力学計算実行
[1リンク2指ハンドによる把握の力学の考察]
・安定把握とは小さな外乱の力では把握状態が変わらないことと定義する.
・ワークを上にして2本の指で支える状態は,ワークが上に動ける自由度があり狭義には安定とは言えないがここでは上記の定義から安定とする.
・このシミュレータでは摩擦係数μ=0.5, 摩擦モーメントの接触等価半径rm=10(mm)として安定性を求めた.
また,外力は自重(下向きの力)のみとする.
・摩擦があれば2点による把握でも安定把握が可能なケースがあるが分かる.
・ワークを下にしても球の半径が小さければ安定に保持できる.
ただし,球の直径を挟む安定な把握状態から少しはずれると不安定になる.接触点を結ぶ直線回りの外力によるモーメントが容易に摩擦モーメントを上回るからである.
・安定把握のポーズは人間の指のようにμ,rmが大きいその安定領域がが大きくなる.
[註]摩擦モーメントの接触等価半径とは,接触点に法線回りのツイスト運動に抗して作用する摩擦モーメントを接触面(通常は楕円)内の回転摩擦力の総和と見てその摩擦力を円周に並べたその円の半径を指す.
Ms = ∫μσds →
μ(2πrs)*Fn, rm = 2πrs