12.2 移動ロボットの機構誤差による軌道誤差シミュレーションManual
改訂08−10−20
実行ファイル3-12-2AGVerr
使用ファイル:
AGVerr.c, graph.h, normal01.DATA, normal12.DATA, normal23.DATA, normal34.DATA
, normal45.DATA
目次
1.シミュレーションの仮定
2.CP経路と走行の時間的変化
3.AGVの走行制御
4.AGVの機構誤差
5.AGV機構誤差を含む走行軌道計算
[シミュレーションの使い方]
[AGV機構誤差・滑りの軌道誤差への影響の特徴]
移動ロボット(AGV)の機構誤差によって軌道が理論的な経路からどのようにずれるか,そのシミュレーションを行う.AGVは経路のずれをフィードバックしない,指令値のみで走行する制御とする.
1.シミュレーションの仮定
・移動ロボット(AGV)の機構は
(1)2DW1C(2駆動輪とキャスタ)
(2)1FDW1FS(前輪駆動と前輪ステアリング)
(3)1RDW1FS(差動歯車付き後輪駆動と前輪ステアリング)
の3種とする(いずれも大きさ約1[m]).
・駆動輪速度とステアリング角速度には限界がある(Vmax=1[m/s],Ωmax=2[rad/s]).
・駆動旋回速度は不連続に変化させることができる(急速変化が可能である).
・空間には障害物がない.
2.CP経路と走行の時間的変化
・経路はCPのみとする.シミュレーションでは10数種容易しており,その中から選択する..
その経路は3.12.03CP運動の具体例(ファイル名3-12-03CP )参照.
・CP経路の走行の時間的な変化は,通常は駆動輪等速度とし,曲率の急変化のときステアリング速度がついていけない場合は走行速度を下げる(フォルダ名3-12-1AGVpath 参照)
・2DW1C機構では等速度を通して構わない.
3.AGVの走行制御
・AGVは経路を知っており,誤差がないとして走行の指令値を予め作成し,その指令値に従って走行するとする.すなわち
(1)経路に沿う駆動輪・ステアリング角の速度パターン,を作成する.
(2)その速度パターンを入力とする.経路からはずれても誤差修正のフィードバックは行わない.
4.AGVの機構誤差
・下記の機構誤差が運動に影響する.
(1)左右後車輪の半径誤差(誤差比率()→2DW1C:走行速度誤差,旋回速度誤差になる.
1RDW1FS:走行速度誤差になる.
1FDW1FS:影響ない.
(2)ステアリング付きの前車輪の半径誤差(誤差比率)→1FDW1FS:駆動速度誤差になる.
2DW1C,1RDW1FS:影響ない.
(3)ステアリング角の誤差():ステアリング角の計測が実際とずれがある場合で,定常的なドリフト誤差である.→1FDW1FS,1RDW1FS:Δφの定常誤差になる.
→2DW1C:影響ない.
(4-1)ホイールベース誤差(誤差比率)→2DW1C:旋回誤差(ステアリング誤差)になる.
1FDW1FS,1RDW1C:影響ない.
(4-2)トレッド誤差(誤差比率)→1FDW1C,1RDW1FS:旋回誤差(ステアリング誤差)になる.
2DW1C:影響ない.
(5)車輪の滑り:駆動輪の速度が不規則にに変化する.→(1)駆動輪半径,または(2)前駆動輪半径が不規則に変化すると同じである.
5.AGV機構誤差を含む走行軌道計算
・制御変数と軌道上の直進・回転速度との関係は(図・式は12.3.1から引用),
(1)2DW1C機構
(3-1)
・(誤差1,5)左右の後車輪半径の誤差比率は,,とする.
・(誤差4-1)ホイールベース誤差比率は,とする.
これらは本来の走行速度,旋回速度を下記のように変える.
(
または
(
(
(2)1FDW1FS機構
(3-2)
・(誤差2,5)前ステアリング車輪(駆動車輪)半径の誤差比率は,駆動速度をにする.
・(誤差3)ステアリング角のドリフトは,とする.
・(誤差4-2)トレッド誤差比率は,とする.
これらは本来の走行速度,旋回速度を下記のように変える.
(
(
または
(
(
(3)1RDW1FS機構
(3-3)
・(誤差1,5)左右後車輪半径の誤差比率は,とする.
・(誤差3)ステアリング角のドリフトは,とする.
・(誤差4-2)トレッド誤差比率は,とする.
これらは本来の走行速度,旋回速度を下記のように変える.
(
または
(
(
・これらの誤差による走行速度・旋回速度の後者の式はシミュレーションで駆動速度入力でなく走行旋回速度(2DW1C),走行ステアリング速度(1FDW1FS,1RDW1FS)入力とする場合に利用する.
駆動車輪の不規則変動滑りについて
・(5)車輪の滑りはどのAGVの場合も,駆動輪速度とする.
この式は,平均の遅れの滑りがあり,のばらつく滑りがあることを意味する.
・は平均値0,分散の正規分布であり,T=1[s]の1次遅れランダムデータとする.
[シミュレーションの使い方]
(1)使用フォルダー名:3-12-2AGVerr ( プログラムAGVerr.c, graph2d.hを含む )
(2)文字画面でのキー操作
(1)スタート → (1)AGV機構の誤差種類選択と誤差設定 → (2)CP経路パターンの選択と経路諸元設定
→ 任意キーによって描画画面へ
(3)描画画面での表示
(1) 左半面にAGVの走行経路と運動アニメーション図
(2) 右上・中にAGVの位置の変化のグラフ
(4)描画画面でのキー操作
‘s’:上記運動の時間経過(sを押し続けると時間的に変化する)
‘0’:運動を始点に戻す
‘x’ , ‘X’, ‘y’, ‘Y’:アニメーション画面を左右上下に移動
‘w’, ‘W’:アニメーション画面を縮小拡大
‘1’, ‘2, ‘3’ :アニメーションのAGV選択
‘c’:CP経路変更のために文字画面へ
‘e’:AGV機構誤差変更のために文字画面へ
‘ESC’:終了
[註]どのAGVもホイールベース・トレッドは約1mである.
制御は入力指令値に従い,経路ずれの誤差修正フィードバックは行わない.
計算を済ませてから画面表示する.
[AGV機構誤差・滑りの軌道誤差への影響の特徴]
・僅かの誤差でも軌道ずれ誤差を生じ,累積されて時間と共に誤差が大きくなっていく.
・軌道誤差は旋回の角度誤差の影響が特に大きい.向きの僅かのずれが目標を大きくずらす.
・2DW1C機構は,2つの駆動車輪滑りの影響が他のAGV機構より大きい.これは両輪の滑りの差は旋回誤差となり,方向を大きくずらすからである.他のAGV機構では走行速度の誤差を生じるが方向誤差にはならない.
・駆動輪滑りによる走行速度誤差は経路誤差への影響は,平均滑りがあるために次第に遅れる.平均値周りのランダム滑りは相対的に影響が少ない.
・色々な機構誤差・滑りは軌道のずれと目標地点からのずれを生じ,経路が長くなると僅かの機構誤差でも大きくずれることが分かる.
・移動ロボットの制御には外界センサによって自分の位置姿勢を観測して誤差のフィードバック制御することが不可欠である.
下記の図は1FDW1FS機構のAGVが,滑り率2%のランダム誤差を持って,経路を走行しているシミュレーションを示している.平均滑りが2%なので平均に遅れが出ている.指令値のみに従って制御すると,わずかの滑り率でも次第に経路からはずれていくことが分かる.