4.3.2.
ラックカッタによるインボリュート歯形創成(ファイル名02toothbyrack)
・ラックカッタのピッチ線が歯車のピッチ円上を転がるようにカッタが移動し,インボリュート曲線が創成される.その創成運動を見る.
[計算]
(1)インボリュート曲線の創成
・ そのカッタの回転角をとすると,カッタの創成点Pの位置は,ピッチ点P0を原点とする座標系で表すと
, ,
, ,
を正方向へ変えると刃先の歯形が創成され,負方向へ変えると歯元の歯形が創成される.
・ カッタの刃(直線)の上記座標系表現の方程式は,カッタの歯元のたけを,歯末のたけをとすると,始点では
, , ()
回転したときは,カッタ刃のピッチ点が
に移り,刃の傾きはとなるので,刃直線の方程式は
,
・ 刃の(創成される歯車から見て)歯元のたけと歯末のたけは,転位がない標準歯車では
, (m:モジュール)
(歯元の有効歯たけはmであるが,標準のカッタでは2つのかみ合う歯車の相手の歯先と自身の歯元との衝突を避けるためにmより大きくしている.)
・ 転位があるときは転位係数をxとすると
,
・ 創成されるインボリュート曲線の歯末の終点(歯形の先)は
, ,
・ 歯元の曲線は刃によるインボリュート曲線・刃先によるトロコイド曲線の繋ぎ合わせとなる.
・ そのインボリュート曲線はインボリュート基点まで創成される場合と途中まで創成される場合とがある.
すなわち,のときインボリュート干渉を起こさず,中途までのインボリュート曲線を創成する.
逆にのときインボリュート干渉を起し,カッタ刃面は基点までインボリュート曲線を創成するが,カッタ刃先の軌跡(トロコイド曲線)によって切り取られる.
(2)ラック歯先による切り下げ曲線(トロコイド曲線)
・ ラックカッタ刃先によるトロコイド曲線の式は,P0を原点とする座標系で表して
P3点がトロコイド曲線の軌跡である.
(3)インボリュートとトロコイドのつなぎ
・ インボリュート曲線とこのトロコイド曲線の交 わる点までトロコイド曲線は続く.
・ 交点は解析的に求められないので,数値計算による.
・ トロコイド曲線の始点は
(歯底円半径)
となるときである.
・ またはP2がピッチ円に接するときP2=P1となるとき)
, ∴
である.
[インボリュート創成の別解]ラックカッタ刃面が作り出す包絡線として式を表現する.
・ ラックカッタはピッチ線がピッチ円上を転がることによってピッチ点P0がPとなり,カッタの刃面の傾きはα0から
(1.21)
(1.22)
となる.ラックの転がり量は
である.
・ ラックのピッチ点の座標はP0を原点とする座標系で表して
(1.23)
(1.24)
(1.25)
である.
・ ラックの刃面の方程式は
() (1.26)
・ θを変化させて作る包絡線は
(1.27)
を満足するである.
・ (1.28)
または
・ (1.29)
ただし
, , (1.30)
, (1.31)
・ 2つの式をまとめると
(1.32)
(1.33)
, , (1.34)
, (1.35)
(1.36)
・ 包絡線の創成点は
(1.37)
(1.38)
(1.39)
・ この曲線はカッタの刃の限界まで創成される.
● 標準歯車
・標準歯車は図のような寸法を持っている.
m[mm]はモジュールで,歯の大きさを表す.
標準歯車では歯のたけは歯先のたけ(addendum)が,歯元のたけ(dedendum)が,ピッチは,ピッチ円上で歯厚・歯溝の幅ともである.
・ 歯元のA点(インボリュート基点)より下の曲線は切り下げ曲線で,ラック型工具によって切り取られる部分であり,かみ合いには寄与しない.この切り下げは歯数が少ないと(の場合はz≦21.5)A点を越えてインボリュート部まで切り取る.
● シミュレーションの使い方
・モジュールm=1[mm]と正規化している.
・ スタート→(1)歯数z入力→(2)シミュレーション項目選択→(3)アニメーション→(2)へまたは終了
・ 選択項目: 1:ピッチ点より歯先側の歯形(addendum)創成
2:ピッチ点より歯元側の歯形(dedendum)創成
3:切り下げ曲線創成
4:ラックが歯車ピッチ円上を転がり運動する連続歯の創成
5:ラックと歯車がかみ合い運動をする連続歯の創成
6:創成された結果の歯面(左右の歯面描画(動かない)
● 特徴
・ (1),(2)で,ラックカッタの直線刃がinvolute曲線を創成することが分かる.
・ (3)において,ラック刃先端は切り下げ曲線を創成する.歯数が多いときはこの曲線とinvolute曲線がinvolute基点で滑らかにつながるが,歯数が少ないときは創成したinvoluteを切り落とし,有効な部分が少なくなる.
・ (5)が実際にラックカッタ(またはホブカッタ)による歯形創成である.
・ (4),(5),(6)においてまたあまりに歯数が少ないと歯の根元が細くなり,実用的に使えない歯車となる.