4.3.3
ラックカッタによる転位歯車のインボリュート歯形創成
(ファイル名03shiftedgear)
・ 転位係数をx,モジュールをmとすると,転位量はである.
・ ラックカッタをピッチ線よりyだけ上に上げて転がり運動させて創成されるインボリュート曲線が転位歯車歯形である.
・ 標準歯車と較べて以下の特徴がある.,
(1) 歯元円・歯先円がyだけ大きくなる.
(2) 歯車の歯元の歯厚・ピッチ円上の歯厚が大きくなる.
(3) 歯元の切り下げが小さくなり,インボリュート曲線の切り落としをなくすことができる.
[計算]
(1)
インボリュート曲線の創成
・ ラックカッタによるインボリュート曲線の創成は標準歯車の創成と同じである.
・ カッタが上に来るので標準歯車よりインボリュートの上方部の曲線を利用する.
・ 創成の計算は02involutebyrackを参照のこと.
(2)
歯車の諸元
(2−1)歯のたけ
・ 創成された歯車の歯元(dedendum)・歯末(addendum)のたけは,転位がない標準歯車では (m:モジュール)
,
(歯元の有効歯たけはm)
転位があるときは転位係数をxとすると
,
(2−2)歯車の半径
歯数をzとして
・ 歯切りピッチ円半径 :
・
基礎円半径 :
・
歯先円半径 :
・
歯元円半径 :
(2−3)ピッチ・歯厚(角)
・ 歯切りピッチ円上のピッチ:
・ 歯切りピッチ円上歯厚 :
・ 同歯厚角 :
・ 任意円の半径 :
・ 任意半径上のピッチ :
・ 任意半径r上の歯厚角 : , ,
・ 任意半径r上の歯厚 :
これらの数値は転位歯車のかみ合い計算に使われる.
● シミュレーションの使い方
・モジュールm=1[mm]と正規化している.
・ スタート→(1)歯数z入力→(2)シミュレーション項目選択→(3)アニメーション→(2)へまたは終了
・ 選択項目: 1:ピッチ点より歯先側の歯形(addendum)創成
2:ピッチ点より歯元側の歯形(dedendum)創成
3:切り下げ曲線創成
4:ラックが歯車ピッチ円上を転がり運動する連続歯の創成
5:ラックと歯車がかみ合い運動をする連続歯の創成
6:創成された結果の歯面1枚(標準歯形との比較)
7:創成された歯車全体(標準歯車との比較)
● 特徴
・ (1),(2)で,ラックカッタの直線刃がinvolute曲線を創成することが分かる.
・ (3)において,ラック刃先端は切り下げ曲線を創成する.歯数が少ないときは創成したinvoluteを切り落とすが,正転位すると切り落としが少なくなる.
・ 正転位すると歯先の幅が小さくなり,歯数が少ないと尖る.
・ involuteの切り下げを起こさず,歯先が尖らない(歯のたけが小さくならない)限界の歯数と転位係数には限りがある.実用的にはz=8がその限界である.
・ (6), (7)によって標準歯車と転位歯車の歯形の違いが分かる.