4.3.5
1対転位歯車のかみ合い(ファイル名05shiftedgearmesh)
(1)
歯車諸元
モジュールをmとして
・ 基準圧力角とかみ合い圧力角 ,
は転位歯車の基本式から決まる.
・ 基準ピッチ円半径
・ かみ合いピッチ円半径
・ 歯先円半径
・ 基礎円半径
・ インボリュート有効半径(切り下げが生じる点の半径) :数値計算による
通常である.
・ 円ピッチと法線ピッチ ,
(2) 1対歯車の諸元
・ 転位歯車の基本式(かみ合い圧力角の決定)
・ 軸間距離
転位するとは端数のつく数値となる.
・ 近寄りかみ合い長さ
・ 遠のきかみ合い長さ
・ かみ合い率
● 転位歯車の効用
・ 正転位によって切り下げが少なくなり,有効インボリュート曲線が増えるので,歯数が少ないときはかみ合い率は大きくなる.
・ ただし歯数が多いときは正転位するとかみ合い圧力角が大きくなり,標準歯車対よりかみ合い率は小さくなる.
・ 歯数が多いとき,負転位してかみ合い率をとすることができる.常に2対の歯がかみ合っているのでかみ合いが滑らかになる(筈である).
・ 1対歯車で歯数が少ない方が多い方より歯元の歯厚が小さく,曲げ強度が小さい.強度バランスを転位することによって等しくすることができる.転位する最大の目的はこれである.
・ V-null歯車はで,,と変わらず,端数のない数値となり,設計に便利である.
● シミュレーションの使い方
・モジュールm=1[mm]と正規化している.
・ スタート → (1)歯数z1,z2入力 → (2)転位係数x1,x2入力 → (3)シミュレーション項目選択
→ (4)アニメーション → (1), (2)へまたは終了
・ (2)選択項目: 1:駆動歯車(歯車1)の描画
2:従動歯車(歯車2)の描画
3:1対転位歯車のかみ合い運動
4:1対標準歯車(転位なし歯車)のかみ合い運動
・ 3,4のアニメーションにおけるキー操作
zキー :歯数z1, z2変更
xキー :転位係数x1, x2変更
sキー :かみ合い運動継続
w, Wキー:図の縮小拡大
r, Rキー :かみ合い回転運動の正逆転
● 特徴
シミュレーションから以下のことがわかる.
・ 3と4のシミュレーションを比較して,標準歯車と転位歯車のかみ合いの違いが見て取れる.
・ 軸間距離は標準軸間距離+2つの転位量()よりやや小さい.このことは歯の頂隙が小さくなることを意味している.歯元のたけを歯末のたけより大きくしているのは頂隙の余裕を保つためである.
・ 正転位した歯車のかみ合い圧力角は大きくなり,かみ合い軌跡の傾きが大きくなる.
・ 歯数が少ないと,標準歯車ではかみ合い率が1以下であるが,転位すると切り下げによるインボリュート曲線の切り落としが小さくなり,かみ合い率を1以上とすることができる.
・ 標準歯車の場合は歯数が多くてもかみ合い率が2になることはないが,負転位すると2以上とする事ができる.
・ 異常に大きく負転位すると2歯車をかみ合わせることができない.
・ また,かみ合うことができても圧力角が小さく,インボリュート曲線の切り落としが大きく,歯先が相手歯車に食い込むなどの異常状態が生じ,正しいかみ合いをすることができない.