3.12.1 移動ロボットの経路生成と走行シミュレーションManual  改訂2008−10−20

実行ファイル:AGVpath

                           

移動ロボット(AGV)の経路生成と基本的な走行制御(経路ずれ誤差をフィードバックしない走行制御)のシミュレーションを行う.

 

● シミュレーションには以下の仮定を置く.

・移動ロボット(AGV)の機構は

 (1)2DW1C(2駆動輪とキャスタ)

 (2)1FDW1FS(前輪駆動と前輪ステアリング)

 (3)1RDW1FS(差動歯車付き後輪駆動と前輪ステアリング)

 の3種とする(いずれも大きさ約1[m]).

・駆動輪速度とステアリング角速度には限界がある(Vmax=1[m/s],Ωmax=2[rad/s]).

・駆動旋回速度は不連続に変化させることができる(急速変化が可能である).

・空間には障害物がない.

・旋回する円の最小半径をRmin=1[m]とする.

● 経路

・経路はPTPCPの2種とする.

PTP経路は,始点P0と終点Pfの位置姿勢を与えて以下のように経路を生成する.

(1)円弧と直線の繋ぎ合わせによる経路

 

 

この繋ぎ合わせのパターンは複数存在するが,その中の経路長最小の経路を選ぶ.

   経路生成パターンは12.0.2PTP運動の経路生成(ファイル名3-12-0-2PathGeneratn )を,経路生成の具体的な計算法は12.0.2C[]AGV経路追従運動と経路生成の詳細説明(ファイル名3-12-0-2CPathgeneratnC)を参照のこと.

(2)Clothoid(台形Clothoid)曲線と直線の繋ぎ合わせによる経路

(1)で選んだ経路の円弧部分をClothoid曲線に置き換えた経路とする.

 

 

Clothoid曲線の計算法は12.0.4クロソイド曲線−曲率が連続変化する緩和曲線(ファイル名

3-12-0-4Clothoid )を参照のこと.

CP経路10数種の曲線を用意している.その中から1つを選んで走行シミュレーションを行う.

    CP曲線については12.0.3CP曲線の具体例(ファイル名3-12-0-3CP )を参照のこと.

● 走行の時間的変化

PTP経路の走行の時間的な変化は以下のように行う.

 (1)経路に沿って駆動輪が等速度で走行

 (2)ステアリング角の変化が曲率変化に着いていけるように駆動輪速度を可変とする走行

 前者は急速な曲率変化があるとステアリングが間に合わず,経路からはずれる恐れがある.

 ただし,2DW1Cは急速曲率変化が可能である.

CP経路の走行の時間的な変化は,駆動輪等速度のみとする.

 PTP経路と同様に急速な曲率変化があると経路からはずれることがあり得る.

● AGVの走行制御は以下のようにする.

 (1)経路に沿う駆動輪・ステアリング角(制御変数)の速度パターンを作成する.

 (2)制御変数を走行速度・旋回速度に変換する.

 (3)その速度パターンを入力とする.経路からはずれても誤差修正のフィードバックは行わない.

 指定した円弧−直線経路及びClothoid−直線経路上を上記のように調整したと走行時間の計算法は12.0.5経路と制御変数及び走行所要時間(ファイル名3-12-0-5AGVrumtime )参照のこと.

  フィードバックなしで等速走行した場合,如何に経路からはずれるかがシミュレーションによってよく分かる.

 

[シミュレーションの使い方]

 

(1)使用フォルダ名AGVpath ( プログラム名AGVpath.c, graph2d.h )

(2)文字画面でのキー操作

 (1)スタート PTP, CP経路の選択   (2-1)PTPの場合,終点設定

  (2-2)CPの場合,経路パターンと経路諸元設定

       (3)3AGV機構について等速・可変速駆動の時間的変化計算 任意キーによって描画画面へ

       (4)描画画面からの変更があるとき(2)

(3)描画画面での表示

 (1) 左半面にAGVの走行経路と運動アニメーション図

 (2) 右上・中にAGVの位置の変化のグラフ

 (3) 右下に曲率変化の変化のグラフ

(4)描画画面でのキー操作

 ‘s’:上記運動の時間経過(sを押し続けると時間的に変化する)

 ‘0’:運動を始点に戻す

 ‘a’ or ‘b’ :円弧−直線,Clothoid−直線の経路の選択

 ‘x’ , ‘X’, ‘y’, ‘Y’:アニメーション画面を左右上下に移動

 ‘w’, ‘W’:アニメーション画面を縮小拡大

 ‘1’, ‘2, ‘3’ :アニメーションのAGV選択

 ‘p’, ‘c’  PTPCP経路に変更して,文字画面へ

 ‘ESC’:終了

[註]どのAGVもホイールベース・トレッドは約1mであり,変更しない.

   制御は入力指令値に従い,経路ずれの誤差修正フィードバックは行わない.

計算を済ませてから画面表示する.

 

 以下の2図はPTP円弧−直線経路を1FDW1FS機構のAGVが定速走行する場合と変速(一時停止を含む)走行するアニメーション場合と,CP経路を走行する場合の例を示している.

● PTP生成経路について

・円弧−直線の繋ぎ合わせでは,繋ぎ目で曲率が不連続に変化しAGVの運動にも不連続性があり,望ましくない.(κ(t)の図参照)

Clothoid−直線の繋ぎ合わせでは曲率変化は連続であり,運動がスムースである.曲線そのものは円弧より外側に膨らみ,経路長は長くなる.

● AGV走行のPTP経路追従性について

2DW1C機構の場合は,全ての経路で正しく追従する.

・ステアリング付きAGVでは追従性は以下の通りである.

・駆動輪が定速走行するST付きAGVの例では,曲率変化についていけず,指定経路からはずれていることが分かる.

・定速走行でClothoid−直線の繋ぎ合わせの経路では,曲率変化が緩和され経路からはずれるケースは少ない.

・しかし,「回転半径Rc=1[m]の円弧(κc=1[1/m])Clothoid曲線に代える」という曲線なので,Clothoidの最大曲率はκcより大きい.

・小さいθの変化をする2直線間の繋ぎの円弧を置き換えたClothoid曲線の場合には,経路長smが短くdκ/dsが大きくなり,ST速度がついていけないことがある.

・「小さいθの変化をする2直線間の繋ぎの円弧を置き換えたClothoid曲線」は最大曲率をRcより小さくすれば(旋回半径を大きくすれば),駆動輪定速走行でもステアリング速度が間に合い,経路を正しく追従できる..

 (このシミュレーションはここでは行っていない)

・駆動輪速度を曲率変化に応じて可変とする走行では経路を正しく追従するのは当然であるが,円弧−直線の繋ぎ合わせの経路の場合,繋ぎ目で一時停止している.これは曲率が不連続に変化しているからである.

・駆動輪速度可変でClothoid−直線経路ではスムースに走行している.

● CP経路への追従性について

・ステアリング角φの初期値は曲線の初期曲率κ(0)に合わせてに設定している.

2DW1C機構の場合は,全ての経路で正しく追従する.

・ここでは駆動輪速度vd=1[m/s]=一定のシミュレーションのみを行っているが,ステアリング付きAGVでは曲率変化率の大きい経路についていけないケースがある(図2).